【お知らせ】英文誌『Japan Review』第36号に書評掲載(T. Linhoeva ”Revolution Goes East”)

2022年3月7日付で、国際日本文化研究センターが発行する英文誌『Japan Review』に私の書評が掲載されました。
YOSHIKAWA Hiroaki, <Book Reviews> Revolution Goes East : Imperial Japan and Soviet Communism By Tatiana Linkhoeva, Japan Review (International Center for Japanese Studies)Vol. 36, 2022 March.
 
私のリサーチマップのMISC(および日文研のレポジトリ)からダウンロードできます。どうぞ皆様、ご覧くださいませ(今様の?「オンライン謹呈」)。
 
私が評したのはタチアナ・リンホエワ先生(ニューヨーク大学助教授)の『Revolution Goes East: Imperial Japan and Soviet Communism』(Cornell UP, 2020)です。リンホエワ先生がカリフォルニア大バークレー校に提出した博士論文をもとにした本書は、1910〜20年代の日本のエリートや知識人によるロシア革命ソ連観を扱った本です。
詳細は書評本文に譲りますが、何よりも本書が魅力的なのは、これまでは左右のイデオロギーで分断されてきた「日本のロシア革命ソ連観」研究(分野で言えば共産党を扱う「社会運動史」と政・軍を扱う「政治外交史」)を包括的にまとめあげたことです。本書は、博士論文も戦間期の日本知識人によるソ連経験と対ソ認識を「左右を越えて」扱うつもりである私にとっても大いに刺激的なものでした。
近現代の日本史を東アジアや東部ユーラシアに位置づけるには、欧米諸国や中国だけでなく、ロシア・ソ連要素をもっと取り扱う必要があります。またこの時局が「ロシア=侵略国=圧政文化」のような一面的な言説の連鎖を引き起こしていることを私は危惧していますが、これは西欧諸国で根強く作られてきたオリエンタリズム的な「ロシア像」とも無関係ではないでしょう。ロシア及び旧ソ連圏の文化の内在的な研究はますます重要になるとともに、海外での「ロシア・ソ連」像の特徴と機能(私の博士論文の究極の問いです)を考えていくことも同じくらいに大事になるかと思います。
短い書評ではありますが外国語での初めての出版を嬉しく思います。雑誌の編集者として、また日文研での師匠として私の拙い英文を懇切丁寧に直してくださったジョン・ブリーン先生にこの場を借りて御礼申し上げます。博士課程にいる間、英文フルペーパーをJapan Reviewに掲載することを目標に精進して参ります。

f:id:h_yoshikawa:20220314090629p:plain